中國園林情報
「天香小築」の造形特色
世界ではコロナ禍がなかなか終息しないが、中国ではかなり改善されてきた様子で、封鎖されていた蘇州園林もすでに開かれているという連絡があった。しかし現状においても、蘇州園林の拝観はほぼ不可能である。それは何故かというと、中国当局が現在外国人の入国を認めていないのである。正確に言えば、在日の中国人でも同様で、要するに海外からの入国に制限を設けているということ。入国がまったく駄目なのではないが、その場合は2 週間の隔離( 行動制限) が必要で、その後に活動が許される。しかし問題は、中国がビザなし入国15 日間という優遇措置を現在停止していることである( 日本も同じく停止中) 。とにかく2 週間も行動制限があるのでは、事実上中国国内を歩く余裕はない。そんな状態なので会長も今年は園林調査を諦めている状態である。そこでこのコーナーでは、蘇州とその近郊の珍しい園林について会長の豊富な写真資料から3 庭ほど紹介して頂くことにした。
今回の園林は、蘇州市内の隠れた園「天香小築」「遂園」の2 庭と、西北郊外の虎丘にある「西溪環翠」の曲水を見て頂くことにする。いずれも一般公開されているが、意外に知られていない園林と言えよう。前二者は中華民国時代の作で無料公開であり、後者は虎丘を拝観( 有料) すれば見られるが、その復元的作風の曲水を知っている人はごく少数のように思われる。
蘇州城内を南北に走るメインストリートが人民路で、その中央部から少し南寄りの東側に、立派な蘇州図書館が建っている。本庭はその南側にあって、図書館の園とも言えるが、実は園の北側に後年図書館が建てられたのであった。一般にはあまり知られていない。園自体は中華民国22 年( 1 9 3 3 ) に建てられた席家の園であり歴史は新しいが、邸宅の東部に展開する亭台楼閣のある倣古式( 古い様式を取り入れた意) 園林である。長らく蘇州市人民政府関連の施設になっていたので、かなり荒廃も進んだが、修復後公開された。動物に似た形の太湖石があることで知られ、また鋪地(ほち)の美しさにも特色が見られる。近年鋪地がやや傷み気味なのは惜しい。
「天香小築」の築山と六角亭
「天香小築」園路の色彩豊かな鋪地
「天香小築」邸宅部の円洞門