中國園林情報

「園林建築」の世界/「廊」の重要性

蘇州園林と日本庭園には、その美意識にかなりの違いがあります。その中でも「園林建築」と呼ばれる数々の建物が園林と一体化している点は、中国独自の園林特色です。今回から、その建築風格について略説的に解説を加えることに致しました。ここに紹介する「廊」は、日本で言う「回廊」の事で、建物と建物を結んで続く光景は非常に美しく、空間処理という視点からも優れています。また、雨の日でも廊伝いに園内を歩き楽しむ事ができるという利点もあります。その多くは、曲がりくねって続くのが一特色で、これを「曲廊」といいます。その場合は、高さにも変化を付ける事が多く、景の変化が大いに楽しめるのです。ここでは、多数の実例中から「曲廊」と「爬山廊」の画像を見て頂くことにしました。

蘇州留園の「曲廊」左の鋪地も美しい

蘇州留園の「曲廊」左の鋪地も美しい

蘇州滄浪亭の廊。この形式を「爬山廊( はざんろう) 」という

蘇州滄浪亭の廊。この形式を「爬山廊( はざんろう) 」という

蘇州にある蘭溪道隆禅師嗣法の聖地

「萬歳禅院(双塔)」と「陽山」

 この文は、直接的な園林についての記載ではありませんが、日本文化と密接に関連する事実について記載します。
蘭溪道隆禅師は鎌倉建長寺開山の名僧で、鎌倉時代に純粋な中国宋代の禅を日本に伝えた最初の帰化僧です。
道隆禅師は若い時に蘇州において無明慧性師に入門して修行し、20代の若さで悟りを得て師の禅を嗣ぎました。その修行地が、南宋時代には「平江府」と称していた蘇州の萬歳禅院と、陽山の尊相禅寺でした。後者の陽山は正に嗣法の聖地といえます。
残念ながら寺自体は失われていますが、道隆禅師自身が日本において師の慧性和尚を偲び、陽山で拾った香木を焚いて師の恩に報いている記録があります。
また前者の萬歳禅院は、今も蘇州の中心部にあり、道隆禅師も眺めた北宋時代の見事な2基の磚塔(煉瓦造りの塔/中国の国宝)が有名です。この蘇州にある道隆禅師の遺跡については、『庭研』422号に、吉河会長が詳しく発表しているので参考にして頂ければ幸甚です。
蘭溪道隆禅師も仰いだ萬歳禅院「双塔」

蘭溪道隆禅師も仰いだ萬歳禅院「双塔」

道隆禅師嗣法の聖地、蘇州「陽山」

道隆禅師嗣法の聖地、蘇州「陽山」

掲載日:2022.01.05


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