中國園林情報

「園林建築」の世界〔2〕/「楼」と「閣」

蘇州園林内には、多数の園林建築名称があり、大きな特色となっています。それぞれの名称は、固有名詞の最後に付せられ、建物個々の性質を表しており、規模等によって構造には違いも見られます。その中で園林内の主要な建物名称には、楼・閣・館・亭・台・等があります。その内から今回は楼と閣について紹介しましょう。ここでは本会にある膨大な園林建築資料写真中から、その一部をダイジェスト的な記事として、基本的な事実について紹介しておきたいと思います。
まず「楼」は二つの性質を持っていて、園内の主要建築である場合と、住宅部の最も奥(多くは北)に建てられるものとの二種があります。そして大きな特色は、必ず二層建築とされていることです。この内、住宅の楼は完全な主人一家のプライベート空間であり、昔は正妻の他に複数の夫人がありました。そのような女性達は楼上層の部屋に住んでいました。現在蘇州園林でこの住宅部がよく保存されている例としては、藝圃や網師園等があります。このような建物を総称して「女廰」とも言っています。
次に「閣」は、基本として楼よりもかなり小規模の建物とされていることが多く、大部分が二層建築となっているのは楼と同様です。しかし日本と異なっているのは、単層建築でも「閣」と称される場合があることです。「楼」は必ず重層ですが、「閣」はそうとは限らないというのが興味深い点と言えるでしょう。

以下、蘇州園林内にある「楼」と「閣」の写真を、園林別に見て頂きたいと思います。

藝圃の「女廰」

藝圃の「女廰」

留園/冠雲楼

留園/冠雲楼

留園「冠雲楼」。東園の北部にある

拙政園/見山楼

拙政園/見山楼

拙政園「見山楼」。池中にあり、高さをおさえてバランスをとる

拙政園/浮翠閣

拙政園/浮翠閣

拙政園「浮翠閣」。六角の閣で上下の幅が同一の構造

拙政園/留聴閣

拙政園/留聴閣

拙政園「留聴閣」。単層の閣は珍しい

獅子林/暗香疏影楼

獅子林/暗香疏影楼

獅子林「暗香疏影楼」。下は廊になっている

滄浪亭/看山楼

滄浪亭/看山楼

滄浪亭「看山楼」。下が洞窟となった稀少実例

掲載日:2022.04.25


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