中國園林情報

蘇州園林に見る「鋪地」の造形/ 蝙蝠紋の紹介

鋪地( ほち) とは、日本庭園で言う敷石のことです。中国では園路や広場等に、非常にデザイン的な美しい鋪地が多く作られており、大きな特色になっています。その代表的なものが「装飾的鋪地」で、各色の小石、瓦、レンガ、陶磁器片、色ガラス片、等を用いた意匠が目を楽しませてくれます。この鋪地の製作技術は、蘇州園林において特に発展し、今日まで引き継がれていますので、各園林に多くの作例を見ることが出来ます。そのデザインは多数ありますが、中でも中国独特の好みから蝙蝠( こうもり)が尊重されていることは、日本ではあまり知られていません。
これを蝙蝠紋と言いますが、何故これが尊重されるかというと、蝙蝠の「蝠」字が、「福」と同じ発音であるために、福が飛んでくるという意味になり、最も縁起の良い「吉祥文様」として人々に認識されているからです。

これについては、吉河会長が『庭研』4 2 5 号に「蘇州園林に見る蝙蝠紋( 下) 吉祥図案としての蝙蝠紋実例/ 鋪地編」として発表されています。そこに挿入されている写真はモノクロなので、ここではその補足を兼ね、6 枚程のカラー写真を見て頂くことにしました。その実例は最も好まれている「五福図鋪地」を5 例紹介し、単独の蝙蝠紋も一例入れておきます。この「五福図」とは、中央円内にデザイン化された「壽」字模様を入れ、その周囲を五匹の蝙蝠で取り囲む形式を言います。独特の意匠と色使いを堪能して頂ければ幸甚です。

なお、この縁起の良い蝙蝠紋は、鋪地に限らず、中国園林独特の園林建築細部にもかなり用いられており、一特色となっています。これについては『庭研』4 2 4 号の「蘇州園林に見る蝙蝠紋( 上) 吉祥図案としての蝙蝠紋実例」に詳しいので、興味のある方は参照されることをお勧めいたします。

拙政園/倚玉軒

拙政園/倚玉軒

拙政園「倚玉軒」西の“五福図”鋪地

北半園/知足軒

北半園/知足軒

北半園「知足軒」前の“五福図”鋪地

瑞光塔園/園路

瑞光塔園/園路

瑞光塔園、園路の“五福図”鋪地

仲雅苑

仲雅苑

仲雅苑の“五福図”鋪地

網師園/井戸

網師園/井戸

網師園、井戸石と蝙蝠鋪地。稀少な作例

拙政園/園路

拙政園/園路

拙政園、中園南部園路の蝙蝠鋪地

掲載日:2022.10.28


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